〜憑神タイヤキ事変〜
作:ヤドカリ様



さても夕暮れ、そろそろ世界が夕焼けに赤く染まろうかという時間帯のこと。
退魔師、鈴華美影は商店街を歩いていた。
何のことはない、退魔師だろうとFBIだろうと飯を食わねば生きていけぬ。
という訳で買い出しに出ていたのだ。
すっかり買い物も終わり、おやつに買ったたい焼きを平らげながら帰路についていた御影は、耳の端の泣き声を捕らえた。
どこか近くで子供が泣いている。

「うーん、親御さんが近く居るんやろうけど」

声が気になった美影は、少し遠回りする気分でそちらの方に足を向けるのだった。
すぐにも鳴き声の主は見つかった。
子供が一人、うずくまって泣いているのだ。
周囲を見回しても親と思われる人物の姿を見つけることはできず。

「置いてけぼりなんてアカンやろ」

そんな親に憤りを感じながら、美影はその子に話しかけた。

「どしたん?お母さんと迷子になったんか?」

美影の問いかけに、子供は首を小さく振って。

「ううん、お腹が空いちゃったの」

迷子でなかった事に安堵と、多少の空振り感を覚えながら、美影は食べかけのたい焼きを差し出した。

「しゃあないな。たい焼き、食うか?」

「いいの?」

「うん。優しいお姉ちゃんやからな」

そういってニッコリと少女が微笑んだとたんだ。

「イッタダッキマース」

少女の体が爆発的に大きくなり、声の質、そして魂の質までも瞬時に変わってしまった。

「な、憑き神!?」

気がついたときにはもう遅い、彼女の目の前には大きく腹部の鉄板を開いた憑き神の姿が大きく映っていたのだから。
次の瞬間、美影は逃げることもできずにそのままばくんと食べられてしまった。
閉じられた鉄板から、甘い匂いが広がり始める。
しばらくして憑神が鉄板を開くと、そこには無数のたい焼きになってしまった美影の姿あった。
憑き神はそれを丁寧に取り出して紙でつつむと、近くにあった屋台にそれを乗っけた。

「オイシイタイヤキアルヨ!!」

そしてその一つをつまんで食べながら、屋台を押していくのだった。



残念、君の冒険はここで終わってしまった!!



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