〜憑神携帯事変〜
作:ヤドカリ様



あ……れ……
私は……確か……妹に、携帯電話を……
買ってあげようと……
豊満な体つきの姉の体に、無数のコードがぎちぎちと巻き付いている。
体の凹凸をしっかりと教えるほどにぴっちりと、そしてまるでコードのテカリが肌の色になってしまっているかのようにみっしりと。
元をたどればそれは、携帯置き場に置かれていた携帯の一つから伸びていた。
ウズウズと蠢くコードは彼女の体をねっちりと締め上げ、大事なところをこすり上げた。
気持ちいいと思う、けれどそれすらわからなくなるのだ。
ぴ、ピピピ……
コードから飛び出たイヤホンが彼女の両耳にしっかりとフィットし、無機質な電子音をひたすらに流し続ける。
あ……ぁうあ……
電子音が流れる度に、彼女の中の大事な何かが書き換えられていく。
眼の前にいる妹は、彼女をどこか憧れのような目で見ていて。
ふと、その視線を遮るようにサングラスのようなバイザーが彼女の頭にかけられた。
表示されるのは0と1で表示されるデジタル表記。
ひたすらに流れていくそれが、まるで視覚を通じてからだの中に入ってくるかのようで。
体を締め上げるコードの群れは徐々に彼女の体を作り替えていく。
もはや、何が変わっていて何が変わっていないのかもわからなくなる。
体に蠢いていたコードはいつしかなくなっていて、そのほとんどがもはや体の一部になって艶やかなてかりを返していた。
体を動かそうと思っても、プラスチックでできた体は反応しない。
ああ、そうだ……なんで機械に過ぎない私が自分で自分の体を動かせるなんて思ったのか。
豊満だった体つきはどこへやら、彼女の体はもはやプラスチックの板に過ぎないかのようだ。
バイザーが挙がる、期待を込めた目で私を見るオンナノコの姿が見える。
この人が、私の、持ち主……
よかった、きっといい子だ、私を大事にしてくれる……
その情報を最後に、彼女の体はくの字に折り曲げられた。
今流行りの折りたたみ式携帯。
後ろでコードを伸ばしていた携帯が、最後に股間から映える電源コードを折り曲げられた彼女の体、ちょうど折れ曲がる尻の部分に突き刺した。
かちり、と機械的な音がして。
彼女の中に残されていた人間的な全てがそのへその緒から吸い出されていく。
それに合わせて、彼女の体が徐々に縮んでいき……
ああ、そうだ。
電源ケーブルと言うなのへその緒が彼女をあらたなる形に完全に変えてしまったのだ。
やがて、というほど時間がかかるまでもなく。
かたり、と軽い音を立てて小さな携帯が床に堕ちた。

「わあい!!」

女の子がそれを拾い上げて、嬉しそうに声を上げた。
そしてすぐにも電話を耳に当て。

「もしもし、オネエチャン?」

『ソウダヨ』

誰かと話して、嬉しそうに笑った。



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