〜憑神縁日事変〜
作:ヤドカリ様
| ドーン、と音がして空に明るい花が開くたび祭里は両手を叩いて大喜びをする。 「わあ、すごいすごい」 目を輝かせてあまりにも喜ぶものだから、つい続けて二発三発と連続で打ってしまうのだった。 人の命を使った不思議な花火は、誘蛾灯のように人を引きつける力がある。 狙った人も呼べるし、無差別に呼ぶこともできる。 今日も、花火につられて沢山の人が縁日に遊びに来てくれた。 祭里はそれにまた、嬉しそうな声を上げる。 「いっぱい遊びに来てくれたね!!そうだ、私あのこの綿あめ食べたい」 どうやら、美味しそうな子を見つけたようでそちらに向かってかけていく。 私はその様子をいとおしそうに見ながら、その後を追いかけていくのだった。 「美味しかったー」 狙ったこの綿あめをぺろりと食べた祭里は、縁日を見て回り始める。 どんな人がきているか、どんな出店をだそうか。 そんなことを考えながらうろうろとするのも、彼女の楽しみの一つだ。 私はいつだって、そんな彼女の後ろに付いて回る。 いつでも助けてあげれるように。 「あっち、すごいたくさんいるね」 ふと、気がついたように祭里が言った。 つられてその方向を見てみると、確かに。 数十人規模の人だかりができていた。 「あ、カメラだ!!」 よくよく見てみるとたしかに、人だかりの中にカメラやマイクを持った人たちがいる。 どうやら、番組の撮影中か何かだったらしい。 「写ってこようかな」 そんなことを言いながらそわそわとしはじめる祭里に。 「ここで写っても放映されないよ」 と教える。 この縁日から彼女たちが出ることはないし、ライブ配信だったとしても電波は外まで届かない そもそも、彼女たちが目の前から消えたところで誰一人として不思議に思わないだろうが。 「むー、そっかぁ」 祭里は、少し残念そうな顔をした。 そんな表情をされると、こちらも悲しくなってしまう。 だから私は、こんな提案をした。 「祭里、花火大会しよっか」 やってきていたのは、40人を超えるとかいう噂の超大型アイドルグループだ。 その中でさらにグループ分けができているというのだからその規模は恐るべしといったところ。 そんなにも数がいながら、誰もがはっとするほどの可愛さを持っているのだから、人気が出るというのもうなずける。 「きっと、綺麗な花火になるね」 憑き神の姿を現した私は、その中の一人に目星をつけると高く飛び上がった。 そして、その子めがけて下の口で飲み込むようにおちる。 あっという間もなくその子を飲み込むと、その中でくるりと丸めて花火に加工。 私の胴体につなげる。 今の私は、いつもよりもずいぶんと背が高い。 さっき打ち上げ分の残りの花火たちが、まだストックされているからだ。 最近は、祭里に危険が及ぶこともあったし何があってもいいように3つくらいはストックするようにしているが。 はじめは嫌がっていた彼女たちも、私の体であることに大分慣れてきたようだ。 それはともかく、突然現れた異形の私に、一団は驚いたようだった。 それはそうだろう。 驚かなかったらむしろ驚く。 「驚ナイデ、コレカラ花火大会ダヨ」 私がそう言うと、一団は顔を見合わせて。 「花火大会だって!!いい絵が取れるぞ」 「やったー、超ラッキーじゃん」 などと喜び始める。 喜んでもらえるなら私も嬉しい。 「ソレジャ、準備スルヨ」 近くでうれしがっているアイドルを器用に丸めて飲み込む。 私の体がまた一つ増える。 ここまで背が高いと、かがむようにして彼女たちをつまみ上げる格好になる。 一人また一人とクルッと丸めてゴクリと飲み込んで花火に変えていく。 たまには下から飲み込んだりもする。 「エート、アナタタチぐるーぷダヨネ?」 「そうでーす、私たち3人でイーグル3!!よろしく!!」 「ヨロシク」 三人を纏めてひとつの大玉に変えて飲み込む。 さすがに、そろそろお腹がきつくなってきたけど。 まだまだアイドルたちは残ってる。 「サア、ぐるーぷゴトに打チ上ゲルカラオイデー」 そう言うと彼女たちは嬉しそうにグループを着くつって寄ってくるので、それをくるりとそれぞれのグループごとにまとめた大玉に変えて飲み込んでいく。 縁日をすっかり見下ろせるほどに体が大きくなった頃、ようやくアイドルたちは全員花火になった。 スタッフも一緒だが。 「イクヨ祭里」 これだけあれば、花火大会といってもいいだろう。 両手と頭を使って、一気に花火を打ち上げる。 爆発音が連続して、空が一気に明るくなった。 花火の種類に合わせて綺麗に見えるようにドンドンと打ち上げる。 ひゅるひゅると音を弾いて飛ぶもの、シダレヤナギのようになるもの。 色も様々だが、どれもやっぱり美しい。 仕掛け花火はないけれど、そのうち出来るようになるんじゃなかと思う。 そして最後は、三人以上をまとめてるグループ大玉花火を連続で打ち上げる。 空を覆うほどの大輪の花が咲いた。 「アイドル48号ダヨ」 アイドル花火を全部打ち上げて体の大きさがほとんど戻った私は、ひどく喜んだ祭里の手を引いて再び縁日を回り始めたのだった。 |