〜憑神喫茶店事変〜
作:ヤドカリ様

クラブサンド

3時も回れば小腹すいてくるというもの、夕食のつなぎに、何か軽めに食べたいと思うのが人情だ。

「オナカスイタナァ」

彼女もその御多分にもれず、くぅ、と可愛い音を出すお腹をさすりながらそう言ったのだった。



軽食といえば喫茶店、香ばしい薫りを漂わせるコーヒーの香りに釣られるように、喫茶店に客が訪れた。
4人連れの女子高生たちだ。
誰も彼もがお腹をすかせたといった様子で、話に花を咲かせている。
席についた四人は、メニューを見ながら何を頼もうかと話をふくらませた。

「クラブサンド、オススメデスヨ」

そこへ店員の一人が、提案するように声をかける。
メニューに乗っている写真は確かにとても美味しそうだ。
ゴクリ、と喉を鳴らした彼女たちは口々に。

「美味しそう」

「うーん、見てるだけでお腹すいてきた」

「よーし、すいません。クラブサンドください!!」

「ハーイ」

店員は返事をすると、そのまま一番近くにいたこを抱きしめた。
既に憑き神の領域となっている喫茶店に踏み込んでいるから、彼女たちが気がつくことはないが、目の前にいる店員はパンの体を持ったクラブサンド憑神だったのだ。
抱きしめられた娘は線が細く、繊細といった印象を受ける娘だ。
ぎゅっと、パンの体に抱きしめ、自らの体に埋没させるまでに力を込める。
そうすると、もう一枚パンがどこからか現れて胴体のパンに重なった。
はてなマークを浮かべながら柔らかいパンで優しく挟まれた少女を、更に力を込めてサンドする。
すぐにも少女の分の厚みは消え去ってしまった。
そのかわりパンの間からのぞくのはみずみずしい緑色をしたレタスだ。

「なんて美味しそうなレタス!!」

それを見て、リーダー格のこが声を上げた。
スポーツをやっているのだろう、恵まれた体つきをしている。

「私も負けてられないな」

いかにもスポーツマンといった強気な発言をする彼女を、憑き神は優しく抱きしめた。

「ん、柔らかい」

パンの柔らかさにうっとりとした声を上げる彼女を、ぐぐっと自らの体に押し付けていく。
少女の体は押し付けられるままにズブズブとパンの中に沈んでいき……遂にはパンの向こう、憑き神の体の中まで行ってしまった。
少女の厚みに膨れた胴体をしっかりと抱きしめると、厚みは徐々になくなっていく。
そうして出来上がったのは、香ばしい厚手のベーコンだ。
食欲をそそる臭いに、残る二人は喉を鳴らした。

「うわぁ、美味しそう。たのしみだなー」

そう言って明るい声を上げた少女を次は抱きしめる。
胸いっぱいのパンの香りを楽しんで、少女は頬をすこしばかり赤く染めた。
そしてそのまま前の少女と同じようにズブズブとパンの中に埋まっていき、小さなふくらみがまたひとつ出来上がる。
しかし、憑き神が数度胴体を撫でるだけで少女の厚みもすぐに無くなってしまった。
そして顔をのぞかせるのは真赤なトマト。
みずみずしい香りと風味を漂わせている、立派なトマトだ。
三人を平らげた憑き神は、満足そうに腹を撫でた。
パン一枚だった胴体は立派なクラブサンドになっている。
そして憑き神は、最後に残った一人を抱きしめた。

「なんだよ。俺なんか、アイツらみたいに美味しくならねえよ」

吐き捨てるようにいうその子はどこか男勝りな雰囲気を醸し出している。
しかし憑き神は、そのこも優しく抱きしめた。

「ソンナコトナイヨ、ピリ辛モ必要」

そう言って優しくその体を撫でると、大きく口を開けて一のみにしてしまう。
ゴクリと音を立てて飲み込まれた彼女は、良い匂いのするピリ辛マスタードになって素材に絡みついた。
それが十分に馴染み渡り、完璧な調和を見せると見るだに美味しいクラブサンドの出来上がりだ。

「デキタヨー」

満足そうにお腹をさすりながら言うクラブサンド憑き神のもとに、喫茶店で働いている憑き神たちが集まってくる。
彼女は胴体を切り離して皿に乗せると、取り出した包丁で大きく切りわけた。
出来上がった美味しそうなクラブサンドを憑き神たちはそれぞれ手にとって堪能する。

「ンー、オイシイ」

「コーヒーモ、アルヨ」

それぞれ自慢の加工品を持ち寄っての楽しい食事になったのだった。




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